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日本・EU・アメリカの一般特恵関税制度(GSP)の適用

2013/07/20 世界情勢

 中国やタイにおける人件費上昇を背景に、労働集約的な生産をカンボジア、ラオス、ミャンマーなどのメコン地域やバングラデシュなどの「新・新興国」に移行する動きが活発になっています。特にアパレル業界ではその動きが顕著で、弊社も数年前からバングラデシュの開拓を進めております。これら新・新興国での軽工業、労働集約型産業は国内需要が小さいため、一般的には日本、EU、アメリカやアジア地域向けの輸出を目的としています。

 新・新興国と呼ばれる国々は、開発途上国の中でも後発開発途上国(LDC)に位置づけられており、LDCに対して先進国では、一般的にLDC以外の開発途上国よりも幅広い品目で関税が無税化されています。これはFTAと同等以上に関税免税の範囲が広いため、一般特恵関税制度(GSP)を利用した節税効果は大きくなります。

 一般特恵関税制度(GSP)には、一般特恵(一般GSP)と特別特恵(GSP-LDC)の2種類があります。一般GSPとは、LDCを除くその他の開発途上国のうち、特恵受益国に指定された国・地域を対象に特恵関税を適用する制度です。GSP-LDCは、特恵受益国の中でも所得水準などが低いLDCを対象とし、一般特恵と比較して、適用される特恵関税の対象品目が広く、且つGSPと同等もしくはより有利な特恵関税が適用されます。

 日本は上述した新・新興国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、バングラデシュ)をGSP-LDCの対象国として認めており、品目総数(9,300品目)の98%で関税を免税しています。

 EUのGSP-LDCは、武器以外の全ての品目を無税化するという意味でEBA(Everyting But Arms)と呼べれており、特恵受益国は49ヶ国、対象品目も品目総数の99.8%とほぼ全ての品目で関税が免除されています。新・新興国の中ではミャンマーを除く3ヶ国がEBAの適用対象国となっています。

 アメリカは、GSP-LDCについて43ヶ国を対象として、4,975品目で関税を免除しています。アメリカのGSPはLDCの主力の輸出品である縫製品の多くの品目を適用対象外としています。新・新興国のうちミャンマーとラオスが適用対象外となっているのも日本と異なります。

 EUとアメリカがミャンマーをGSP-LDCの適用対象外としているのは、それぞれに理由があります。EUは労働者権利保護の状況を問題視し、1997年以降適用停止措置をとってきました。アメリカは共産主義国や労働者の権利保護が不十分な国などにはGSPを供与しない方針をとっています。但しミャンマーが急速に民主化に向けて動いている状況を踏まえ、EU、アメリカ共にミャンマーに対してGSPの適用を認める方向で検討が進められています。

 最後に我々が一番注目しているのがバングラデシュに対するEU及びアメリカの対応です。2013年4月にバングラデシュの縫製工場が入居するビルが崩壊した事故を受け、バングラデシュでの労働者の権利保護が不十分と判断して、アメリカは6月27日にバングラデシュに対してGSPの適用対象を除外することを発表しました。EUでもバングラデシュへのGSP適用停止を視野に労働者の権利保護の状況が調査されています。

 バングラデシュの対米輸出額は37億ドルで輸出総額の17%を占めます。しかし、輸出品のほとんどはアメリカではGSP適用対象外となっている縫製品で、今回のGSP適用停止措置の実質的な影響は、食料品や一部の靴類などにとどまると考えられています。一方EUがバングラデシュにGSPの適用停止措置を実施した場合、主力の輸出品である縫製品にGSP-LDCが適用されている上、バングラデシュの対EU輸出額は輸出総額の45%(110億ドル)を占めるため、大きな影響を与えることになります。

 仮にEUがGSPの適用停止措置をとったとしたら、行き場を失うバングラデシュの輸出品が向かう先は日本になるのではないでしょうか。

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